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【世事関心】 南シナ海・中国軍拡の真意とは(下)

2011年08月05日

 新唐人スペシャル【世事関心】南シナ海――中国軍拡の真意とは(下)


【司会者】
「こんにちは。前回の主なテーマは中国の空母計画でした。実際、空母のほか、中国海軍は別の戦略的武器も発展させています。潜水艦です。ある意味からいえば、潜水艦、特に戦略原潜は空母よりも攻撃力を持ちます」

中国軍の南シナ海への空母配備の狙いが、南沙諸島を海軍機の飛行範囲に収めて、領土防衛に役立てることだとすると、原子力潜水艦の目的は、当初から南シナ海あるいは東シナ海を超えています。

水上艦艇とは違い、潜水艦には、身を隠しながら、防衛を突破できる能力があります。動力で分類すれば、通常のディーゼル潜水艦と原子力潜水艦に分かれます。

任務で分ければ、敵の船を攻撃し、航路を封鎖するのが攻撃型潜水艦。核攻撃を担うのが戦略ミサイル潜水艦です。いったん潜水艦が水中発射型の核ミサイルを搭載し、原子力を採用していれば、深海を数ヶ月も潜行できます。世界でも、最も恐れるべき武器になるでしょう。この種の潜水艦は、通常、戦略ミサイル原子力潜水艦といいます。

中国軍の元内部関係者 劉さん
「1981年ごろ、遼寧省(りょうねいしょう)の葫芦島(ころとう)で原子力潜水艦の生産が始まりました。当時の潜水艦の活動範囲は主に、内海でした。原子力潜水艦は動力の問題のほか、核弾頭もあります。これも攻撃型の武器です。原潜(げんせん)のクラスがロシアと同じくらいになれば、大西洋を含めた世界の海を潜行することができます」

核戦争を想定すると、いったん戦争が勃発した場合、ある国は、敵から集中的な核攻撃を受けます。核の嵐を受ければ、ほとんどの軍事力はマヒしてしまいます。この時、はるか遠くの海深くに潜む原潜が、恐らくその国にとって唯一、核で反撃できるパワーとなります。

このほか、原潜は敵国の近海にまで潜行して、ミサイルを発射できます。敵は事前に察知できず、迎撃もできません。そこで戦略ミサイル原子力潜水艦は、敵に絶えず威嚇を与え続ける奥の手となるのです。

中国は、世界で戦略ミサイル原子力潜水艦を持つ5つの国の1つです。1980年代から092型”夏(シャー)級”戦略ミサイル原潜が就役。水中発射が可能な“JL型”弾道ミサイルを搭載するものの、西洋諸国の原潜には、技術ではるかに及びません。
アメリカとその同盟国は、第一列島線をより所に、水上戦闘艦と対潜機で強大な対潜攻撃力を構成。数十年来、日米はずっと、対潜能力で中国を圧倒 していました。しかしこの数年、中国の潜水艦部隊の防衛突破能力は、大きく向上しています。

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「解放軍の潜水艦は、3年前、すでに第一列島線を越えていました。日本海も越えていました。琉球諸島も越えました。台湾の北部、台湾海峡も越えて、太平洋のアメリカの領土に到達しました。グアムです。中国軍の潜水艦はすでに第一列島線を越えたのです」

2007年、中国新世代の094型“晋(ジン)級”戦略ミサイル原潜が就役し、古い092型に取って代わりました。通常動力の“元(ゆえん)級”潜水艦も、戦闘力を瞬く間に形成。これにより中国軍は、水中航続能力と 静かな航行という2つの課題で、一定の前進がありました。中国の潜水艦部隊の作戦能力が向上すれば、日米はそれ相応の軍事配備が必要になります。

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「アメリカは、3~4年前、つまりブッシュ前大統領の時代、軍事力の再配備に着手しました。日本や韓国から一部の兵力をグアムに移しました。またはハワイに移しました。あるいはフィリピンやオーストラリアにも移しました」

中国の潜水艦部隊の作戦能力がすでに大きく上がったとはいえ、世界のレベルからみれば、まだ遅れているといわれています。

中国軍の元内部関係者 劉さん
「海上作戦能力とは、立体的な作戦の問題になります。軍事の世界でよく言うのが:水上の魚と水中の魚は大きさがほぼ同じだ。つまり、水上の空母が世界のトップレベルに達していれば、その国の原潜も同じレベルに達しています。ですから、中国はアメリカよりも、ひいては他の国、フランスやイギリスと比べても、潜水艦の技術では少なくとも10年から15年は遅れているでしょう」

【司会者】
「南シナ海周辺の国は国力で中国にかないません。中国以外の国と地域は原潜や空母を造る力がないのです。そのため南シナ海問題の国際化を狙っています」

1990年から、中国は南シナ海の紛争を棚上げにし、共同開発をすることを主張。これに対し、1994年、東南アジア諸国連合(ASEAN)は、今後は2国間ではなく多国間で交渉に当たると宣言し、中国が外交と経済で南シナ海各国を分断させるのが難しくなりました。

2002年中国とASEAN各国は、カンボジアのプノンペンで“南シナ海各国行動宣言”に合意。排他的経済水域を含む、1982年の“国連海洋法条約”の尊重など、平和的に主権問題を解決することを宣言しました。

しかし近年、中国とフィリピン、ベトナムなどの国で、漁船同士の衝突など、摩擦が絶えません。さらに中国海軍の増強など、周辺各国の不安は日に日に増しています。

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「中国はかつて、南シナ海の島に拠点をもっていませんでした。だから最近、躍起になって、軍艦や潜水艦、さらには中国漁船までも使って人海戦術を繰り広げています。多くの島に上陸し、漁港を築きます。それから標識であるブイも浮かべて、漁船が島で休憩を取っています」

表面上、漁船の作業は民間の経済活動に見えますが、背後には政治的軍事的意図があるのです。もし地域の軍事バランスが崩れていけば、民間の摩擦がひいては軍事衝突にエスカレートするのではと南シナ海各国は案じています。そこでベトナムなどは、南シナ海紛争への国際社会の関与を望むのです。

2009年11月、ベトナムは南シナ海問題の国際的な学術討論会を実施。南シナ海問題は国際問題へ発展しました。

国際評価戦略センター フィッシャー氏
「兵力を輸送する能力、南シナ海をコントロールする能力という角度からいえば、中国はすでにこの能力を持っています。マレーシアやフィリピン、ひいては台湾に対して行動し、南シナ海の島を占領することもできます。彼らを追い出すこともできます。中国がこれをしないのは、これらの国がアメリカのドアをたたき、助けを求めるからです」

注目すべき点は、近年、台湾海峡ではない南シナ海が米中摩擦の舞台となったことです。

2001年4月1日、アメリカ海軍のEP-3電子偵察機が海南島の東南110キロの公海上の空で、偵察任務を終えてから戻る際、中国軍機2機に遭遇。そのうちの1機が米軍機に急接近したため、衝突が起こりました。中国軍機がその場で墜落したほか、米軍機も大きく破損し、海南島の陵水飛行場に不時着。その後、中国側に差し押さえられ、事件は米中の外交問題に発展しました。
2009年3月8日、アメリカ海軍の海洋測定艦“インペッカブル”が海南島の南120キロの公海で作業している時、中国の海軍情報船と漁船を含む、中国船5隻に囲まれました。

南シナ海は台湾海峡ほど敏感な地域ではないこともあり、中国はここでの主権に、より強気で挑みます。では南シナ海は、大国の衝突の舞台になるのでしょうか。

国際評価戦略センター フィッシャー氏
「もしアメリカが測定艦を使って、公海では自由に航行できるという権利を見せ続けるのなら、ええ、また衝突が起こるでしょう。次は、アメリカは非武装の測定艦を海南島以外の公海に派遣するでしょう。これに中国はより強い反応を示し、中国海軍は本当にアメリカの船に発砲する恐れがあります。これは決していい動きではありません。この事は、我々が中国当局と解放軍の南シナ海に対する制御を許したことを現わし、南シナ海のほかの部分が中国に属すると認めたことを意味します」

2009年、南シナ海の海は荒れました。“国連海洋法条約”は、すべての批准国に、2009年5月13日までに排他的経済水域と大陸棚の境界計画を国連に出すよう求めたため、南シナ海周辺の国に緊張が走りました。

3月、フィリピンのアロヨ大統領は、中沙諸島の黄岩島と南沙諸島の一部を自国の領海に入れる法案に署名しました。

2週間後、マレーシアのアブドラ首相は、自国が制御する南沙諸島の島に上陸。

同時に中国とフィリピン、ベトナム、インドネシアとの間では、いわゆる“漁船の衝突”が激しさを増していきました。2009年、不安が渦巻く中、結局大きな衝突は起こらなかったものの、それぞれの主権の立場には変化がないので、南シナ海で戦争の起こる危険はまだ消えていません。

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「中国が南シナ海で隣国と衝突を起こす可能性は、なくはありません。しかも、可能性は大きいです。私は、南シナ海での戦争を望みません。軍事衝突も望みません。でも、誰にも分かりません。どの国も国益が第一です。
特に、中国は強大な軍事力を頼りに・・・。戦争でなくても、小規模な衝突、漁船同士の衝突が起こり、漁船の後ろにいた軍艦が介入する恐れがあります。かつて、このようなことが起こっています。しかも南シナ海には、海賊が多い地域です」

軍事評論家 文昭氏
「中国海軍の力は、近年ずっと高まり、中国を取り巻く環境も良くなりました。逆に南シナ海問題では、沈黙を守っていました。中国軍は懲罰的な軍事行動にも出ていません。政府の一番の関心事は国内問題ですが、南シナ海で国の主権が侵されていると強調すれば、国民の共産党への支持を高めつつ、さらなる軍拡の口実が得られます」

南海艦隊はここ数年、装備の近代化が目立ちます。現在の編制は、護衛艦部隊1隊、駆逐艦部隊1隊、通常潜水艦部隊1隊、通常潜水艦と原潜の混合部隊が1隊、モーターボート部隊が1隊。

南海艦隊は目下、中国の三大艦隊のうちで、駆逐艦と護衛艦の数が最も多く、最新の型を所有しています。

ロシアの“ソヴレメンヌイ”級駆逐艦に性能が近い052B型駆逐艦(“旅洋Ⅰ型”)と、(高い防空能力を持つ)052C型駆逐艦 (“旅洋II型”)が南海艦隊に配備されています。

中台関係の改善、および中国軍の空母が南シナ海へ配備される計画などから、中国の台湾に対する軍事的なもくろみはだんだんと薄れていき、視線を南に移し始めると予想されています。

一方、中国軍内部の関係者の見方では、東シナ海で日米と天下を争うという中国の戦略的意図は変わっておらず、東シナ海こそが重点で、南シナ海にはけん制の役目しかないといいます。

中国軍の元内部関係者 劉さん
「東側の作戦能力が一貫して比較的強大です。軍区でいえば、例えば南京(なんきん)軍区、済南(さいなん)軍区、瀋陽(しんよう)軍区、北京軍区、東の軍区には、最精鋭の部隊を配備するのです。正面には、日本と台湾、アメリカがいますから。
南には、米軍のフィリピン基地しかないので、華南(かなん)では、正面衝突というよりも退路が絶たれるだけです。だから、戦略的な位置はやはり東側なのです」

【司会者】
「国防技術と総合的な国力を示す海軍、中国海軍の規模と質の向上で、軍事費は大幅に増えたものの、中国の納税者にとって、軍事予算はこれまでずっと、いい加減なものでした」

中国の実際の軍事費について、多くの国際研究機関が注目しています。各機関の結論には多少違いがあるものの、共通しているのは、中国の実際の軍事費は、公表された数字をはるかに上回るという点です。

例えば2009年、中国は国防予算を約703億ドル(約6兆円)と発表。しかしアメリカ国防総省は、実際の支出は1,050億ドルから1,500億ドル(約12兆円)で、アメリカに次ぎ、世界2位だと予測。

2005年を例にすると、中国は国防費を約299億ドル(約2兆5千億円)と公表。しかし、アメリカ国防情報局は、900億から1300億ドル(約7兆~10兆円)だと予測。

2003年中国の公表した国防予算は250億ドル(約2兆円)未満。ストックホルム国際平和研究所は、当時の相対的な購買力に基づくと、1400億ドル(約11兆円)に相当すると指摘。
2003年中国国防予算

具体的な数字は異なるものの、どの研究機関も共通して指摘するのは、中国の軍事予算は、人件費や軍事訓練費、装備の整備費、輸送と保管費用、一部装備の研究開発の調達費のみで、他の大きな事業、例えば戦略ミサイル部隊の支出、外国からの武器購入、大部分の軍事研究費、準軍事組織の費用などは入っていません。

中国の不透明で急激に増える軍事費に、多くの国が案じています。2010年、軍事費問題を問われた中国の軍事代表は、こう答えました:アメリカこそ、世界で最も軍事費の多い国であり、地域紛争への介入も多い国である。なぜアメリカに問わず、わざわざ中国に問うのか。これは一部の人の考え方をあらわしている。

軍の政治協商会議委員 羅援
「おかしいですよ。我々が国防費を公表すると、あれこれ言う国がいます。世界で軍事費が一番の国には言わないのに。軍事衝突の多い国には問わないのに。中国がわずかに軍事費を増やすと、あれこれいう国がいるのですから」

軍事評論家 文昭氏
「軍事費は、20年連続で2桁の伸び。7、8年で2倍。しかも、その2、3倍の隠れた予算があります。わずかに軍事力を増やすのなら、教育予算や農村医療費をわずかに増やせないのでしょうか」

軍事評論家 文昭氏
「アメリカになぜ聞かないのかと中国は言いますが、これが問題です。アメリカが超大国となってすでに半世紀余りになります。隣国のカナダとメキシコばかりか、世界の大部分 の国さえもみな、アメリカに不安を感じていません。これは第2次世界大戦でナチスドイツや日本を破り、自由世界を守り、人類の文明のため大きな貢献をした点と関わります。戦後、アメリカは多くの地域紛争に関わったものの、根本的には、この原則から離れていません。しかし朝鮮戦争、これは金日成(きむいるそん)が発動しましたが、中国は人民の命を犠牲にして、この独裁者を守ろうとしました。中国共産党が歴史的に犯してきたことから、各国は不安を覚えます。これは自然なことではないでしょうか」

国際評価戦略センター フィッシャー氏
「中国共産党は、このパワーをどう使おうとしているのでしょうか。自由を守るのか。人権を促進させるのか。あるいは他の独裁者を守るのか。例えばイラン、ベネズエラ、あるいはキューバ。中国政府は共産党の独裁政権です。ですから他の独裁政権は、自由国家との関係よりも中国政府との関係のほうが親密になります。このような政治的な傾向が、世界的な軍事力と結びつけば、これは世界で新たな真の闇の時代の幕開けになってしまうでしょう」

【司会者】
「これらの疑念は中国の強大を心配というより、共産党政府への深い不信でしょう。共産党は この種の意見を“中国脅威論”だと決め付けますが、ストックホルム国際平和研究所によると2008年中国の軍事費はジアで1位 世界で2位、ただ中国は“平和的台頭”を約束しています」

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「中国がこんなスピードで軍備拡張をするのなら、彼らのいう、いわゆる“平和的な台頭”をすでに超えたと思います。平和的な台頭などあまり信じられません。もし平和を築き上げるのなら、あれほど多くの国防予算は必要ありません。大陸間弾道ミサイルも要りません。台湾、日本だけでなく、アメリカにも向いています」

中国軍は結局のところ、20年余り近代化戦争をしていません。しかも、軍には腐敗が蔓延しています。

中国軍の作戦能力はどれほどなのでしょうか。各界の推測は異なるものの、軍事面からだけ見れば、中国軍の陸海空軍同士の共同作戦能力は、先進国からまだ後れているという声が代表的です。

中国軍の元内部関係者 劉さん
「中国は陸海空軍の連携がよくないのが弱点です。中国軍はこれよりも、強大な外側の殻にこだわります。全体の共同能力はだめです」

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「兵士が多くても強いとは限りません。よく訓練されていなければ、合同作戦能力が足りません。海軍にだけ頼っても、役に立ちません」

2000年余り前の壮大な軍事書、“孫子の兵法)”にはこうあります:戦の勝ち負けは、兵器と兵力では容易に分からない。まず戦略面で総合的な比較をする必要がある。すなわち“廟算”。
 “廟算”の最初のカギは、“主熟れか有道なる”。どちらに正義があり、民心を獲得しているかという意味です。

その2000年後、西洋戦略学の父、カール・フォン・クラウゼヴィッツの“戦争論”には、“戦争は政治の延長である”という言葉があります。

東西の巨匠が明かした真理、それは:戦場(での得失)は一時のものであり、勝負を決める最後の要素は戦場の外にある。

軍隊は社会の外の真空で暮らしているのではなく、社会の圧力は必ずや軍隊内部へと伝わります。中国共産党の存在および民意からの背離こそが中国軍の致命的な弱点だと、ある専門家は指摘しました。

台湾 蔡明憲・元国防大臣
「もっと重要なのは中国内部からの圧力です。中国人は、民主や自由を求めています。1989年の天安門事件、そして法輪功(ふぁるんごん)が信仰、宗教の自由を求めました。私の記憶では確か、中国では毎年8万件以上の集団抗議事件が起きています。中国共産党はそれほど長く持たないと思います。国民は政権に納得しているのでしょうか。中国内部の民主化、自由化の運動と波が起これば、共産党は止められません」

【司会者】
民は国境でさえぎれない。国は険しい山川で守れない。天下も鋭利な武器では得られない、道義があれば多くの助けを得て、道義がなければ助けは少ない。この儒家の大師 孟子の名言は数千年来すでに無数の史実で証明され、智慧の光を放ち続けました。近い将来、中国人が真に自由を得て、自分と国家の主人になった日、我々民族は祖先と同じように広い心で、世界と向き合えます。南シナ海も新たな歴史を刻み、中国も天下泰平の世を迎えます。
本日はここまでです。ありがとうございました。次回お会いしましょう。


www.ntdtv.com/xtr/b5/2010/04/11/a400580.html#video
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*この番組は2010年4月に制作した番組です。

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